ご報告

2026年5月23日(土)日本イノベーション融合学会 2026年度年次大会が拓殖大学で開催されました

2026年5月23日イノベーション融合学会 年次大会の各発表サマリーを以下に集約しました。

イノベーション融合学会 年次大会報告

【開会挨拶】学会の歩みと今期の決意

理事長 藤掛 正史  

今期は「融合のミックス」として、他法人との融合や「DXイノベーション検定試験」の世界化など、3本の矢で活動を展開する。また、顧問陣による経済安全保障や国際関係・防衛分野からの強固な支援体制が紹介された。

学会の歩みとして、設立総会を行った拓殖大学をはじめ、青山学院大、慶應義塾大、関東学院大、東京都市大などでの開催、コロナ禍のオンライン開催や「知のオリンピック」との共同開催といった歴史を振り返った。

最後に、拓殖大学ゆかりの人物の功績に触れつつ、単なる西洋的な経済指標の追求にとどまらず、本学会として「経済と道徳のあり方」を追求していくという今後の展望と決意が示された。

【大会テーマの背景】

理事 三宅 創太

大会テーマの背景が語られた。AIが現実世界に実装され情報の融合が加速する今、日本がかつて強みとした「信頼と約束」を基盤に、日本型イノベーションを結集させて世界に変革をもたらす好機であるとした。

【基調講演】「ソーシャルキャピタルを基盤とした共生社会の創出:
      国際医療協力と実践事例から考える日本型イノベーション」

 株式会社GMSSヒューマンラボ代表取締役・医師 安藤 裕一 様

日本の高い平均寿命の裏にある自殺率や孤立という課題に対し、人と組織のつながり(ソーシャルキャピタル)の重要性を説いた。ケニアの障害児支援、アフガニスタンの水源確保、アートパラ深川の事例を引き、社会的処方やオープンダイアローグの有効性を提示。イノベーションとは単なる技術革新だけでなく、社会に貢献する「社会的イノベーション」であるべきだと結んだ。

【特別講演1】AIエージェントによる地域経営の最適化:
      論理的思考で突破する地方DXの壁」

 株式会社ロードフロンティア代表取締役  並木 将央 様

日本の深刻な「デジタル赤字」と、あと10年で経常収支が赤字化するタイムリミットが警鐘された。本当のDXとは業務効率化ではなく、新しいサービスで付加価値を生むイノベーションであると定義。対策として、ハラスメントの心配なくタスクを代行する「AIエージェント」や自律型の「エージェントAI」を駆使し、業務の無人化やリソース創出を行う戦略を提示した。また、優秀な若者や資金が東京へ一極集中する構造を「親の愛が地域を滅ぼす」と表現。地域で稼げる「ローカルゼブラ企業」を育成し、産学官で人材と経済を循環させて地方復活を果たす重要性を論じた。

【特別講演2】日印イノベーション融合の架け橋

 元 茨城県立土浦第一高等学校 校長 プラニク・ヨゲンドラ 様

日印連携における「秩序と混沌の境界」での課題が語られた。インド単独では品質の壁を越えられず、日本単独では市場が縮小するため連携は不可欠だが、現地インフラや政治的リスクなど多くの障壁が存在する。また、日本の教育環境が発想力を育てておらず、国の「DXハイスクール」も単なる設備投資のばらまきに終わっている現状を批判した。現在、国内のインド人IT人材は増加しているものの、日本企業側が彼らを活かす体制ができていない。単なる技術結びつきを超え、互いの役割やルールを具体化して共に働く環境を作る「ソーシャルイノベーション」こそが、共生型イノベーションを成功させる鍵であると訴えた。

【一般発表1】地域未来政策の展望と自治体AI

日本DX地域創生応援団 常務理事、株式会社コクリ研究所代表取締役 濱崎 真一 様

地域のローカルと世界をつなぐ「グローカル」への転換が提唱された。同団体は「地域DXプロデューサー」を約200人育成。自治体向け対話型AI「サルくん」は多くの自治体に普及し、現在は後継として、さくらインターネットの国産サーバーに移し安全性を高めたAIエージェント「ヤマトくん」を展開。教育や消防など現場への活用が口コミで急拡大している。国が進める「地域未来戦略」では新たな交付金制度が始動しており、自治体独自のプラン策定が求められている。明治維新や終戦から80年目の転換期である今、中小企業を含めた全産業がAIを使いこなす「AI大国」への変革が必要だと結んだ。

【一般発表2】世界資本と地方経済の融合

みらい株式会社 (九州旅客鉄道株式会社より出向)  出田 貴宏 様

九州を基盤に世界資本とつながる実践的プロジェクトが発表された。台湾のTSMC進出を機に半導体産業が集積する九州において、台湾・シリコンバレーと直接接続された「3極連携」の必要性を指摘。スタンフォード大学の西村氏と連携し、優れた研究が埋もれる「死の谷」を克服するため、組織OSを世界標準へ切り替える動きを推進している。産学官金が結集するカンファレンスを通じ、最先端研究をビジネスに実装するサプライチェーンを構築。「2030年までに時価総額1000億円規模の企業を2社創設」等の数値目標を掲げ、製造業の強みが残るうちにAIを融合させ、地域経済を再興する決意を語った。

【一般発表3】イノベーションの危機管理

株式会社イノベリタ代表取締役社長・IFSJ理事・研究クラスター長  亀田 修 様

インターネット、AI、ロボットの融合がもたらすリスクと、それに対する危機管理の重要性が解説された。過去のサイバー攻撃事例からデータを失う重大性を指摘。AIが自律的に行動する「フィジカルAI」の脅威として、瞬時の脆弱性検知によるハッキング、金融・電力インフラの破壊、自律的なコード書き換え、ロボット同士の独自言語生成による制御奪取や技術流出リスクを危惧した。映画『ターミネーター』のような未来を回避するため、独自の暗号技術や安全なロボット制御開発に取り組む。真のイノベーションとはリスクを予測・防御する視点が不可欠であり、社会課題解決には2つの異なる技術の融合が必要だと結んだ。

【一般発表4】「2025年IFSJドイツスマート農業視察研修について」
元農林中央金庫副理事長・IFSJ会員ドイツスマート農業視察団長 向井地 純一 様

スマート農業クラスターによるドイツ視察から、日本との圧倒的な格差と提言が報告された。ドイツは農家1軒あたりの経営面積が日本の約20倍(63ヘクタール)で、農畜産物輸出額は日本の100倍(102兆円)に達する。EUの強い環境規制のもと、AI、衛星、ドローンを駆使した「データ駆動型農業」や、独人工知能研究センター(DFKI)主導の「アグリ・ガイア構想」によるデータ共有エコシステムが確立されている。日本も2050年に有機農業割合25%を目指すが、農地基盤が小さく大型重機の導入は困難。今後は日本の土地柄に合わせ、農地の統合、自動化ロボット開発、農機のレンタル・シェアリング仕組みの確立が不可欠であるとした。

【一般発表5】「AIエージェントによるアプリ開発事例研究」
株式会社ディックソリューションエンジニアリング  吉本 正人  様

AIエージェントの登場による「仕様駆動開発」へのシフトと、劇的な労働生産性向上の実態が示された。専門のエンジニアでなくとも、人間の意図を反映した仕様書をAIに与えれば、自律的にコード生成やアプリ開発を完遂する環境が実現。講演者は業務の傍ら、安全性の高い社内ローカルLLM基盤や共同作業アプリなど20超のツールを1人で開発した。これは従来開発の150〜200倍の効率であり、大企業12社分の年間生産性に匹敵する。開発にかかる時間とコストの壁が崩壊したことで試行回数は激増し、イノベーションは民主化された。今後は「コードが書ける人」ではなく、「解きたい課題を深く理解し、正しい仕様を書ける専門家」が主役になると結んだ。

 

【一般発表6】「BSC・SECI・SOG融合フレームワーク」
松の緑  代表  松浪 榮  様

野中郁次郎氏の知識創造理論(SECIモデル)を基に、戦略フレームワーク「バランスト・スコアカード(BSC)」の内部プロセスに知恵を組み込み、戦略に魂を打ち込む手法が提示されました。講演者は、評価指標の形骸化を防ぎ個人の内発的動機を最大化するため、独自の成長方程式「SOGP」を考案しました。これは強みに役割行動(マチュリティ)を掛け合わせて成長を数値化・可視化する仕組みで、20年に及ぶ大学弓道部での指導経験から着想を得たものです。個人の強みと組織目標を三位一体で循環させ、AIに使われないための「何のためにやるか」という大志・志を根底に置く、自律的な組織改善サイクルの重要性が語られました。

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